経営方針・経営戦略

経営方針

「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業体を目指す」のビジョンのもと、景気動向に業績が左右されることがないように、銀行業、債権買取回収事業を中核とする総合金融サービスを目指してまいります。収益モデルにつきましては、既存の事業ポートフォリオの価値や将来性を徹底的に見直すことにより収益構造の改善を図ってまいります。今後はこの方針をさらに加速させ、聖域を設けることなく、事業ポートフォリオの価値を見直し、新たな成長戦略を構築することにより、株主価値の最大化に努めてまいります。さらには、コンプライアンスやガバナンスを第一に考えた経営を基軸におき、お客様に付加価値の高い金融サービスを提供するなど地域とともに共存共栄で発展していく企業体を目指してまいります。

中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

(日本金融事業)

信用保証業務では、当連結会計年度は主力商品であるアパートローン・海外不動産・有価証券担保ローンに対する保証への選択と集中による施策を実施し大きく実績に反映させることができました。翌連結会計年度につきましてもアパートローン、有価証券担保ローン、海外不動産担保ローンに対する保証を中心に収益拡大を図るべく推進してまいります。信用保証業務における主要な課題、対策は以下のとおりです。

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項目 課題 対策
アパートローンに対する保証事業 アパートローンの更なる成長
  1. エリア拡大
    顧客層、エリアの見直し仕入価格高騰、金利上昇の局面で、投資意欲の減退又はエリア対象外となり、保証実行が不調となることを防ぐ
  2. アパートローン仲介案件の取扱い
    買取再販業者だけでなく、新たに一棟物の仲介業者が扱う良質物件の取扱いを目指す
  3. 指定業者の拡大
  4. 借換え需要に対する営業促進
有価証券担保ローンに対する保証事業 グループ間相互の顧客の連携による保証商品の開発 ・有価証券担保ローンの収益改善と銘柄追加
  1. 適用金利の変更と取扱い銘柄(投資信託)を追加することで収益拡大を目指す
  2. 他の金融機関と有価証券担保ローンの商品化
その他の保証事業 海外不動産担保ローン等保証商品の開発(多角化) ・海外不動産担保ローンの普及強化
  1. 大口個別案件の取り込み
  2. バックファイナンス案件の促進
・新規保証商品の開発

債権回収業務では、円安などによる物価高騰がまだ終わりが見えない状況にありますが、当社グループの債権買取実績は、そのような状況下でも売上が増加しているネット系のカード・信販等が多く、順調に債権残高の増加が続いております。今後も高い回収力を背景として安定的・継続的な仕入れを実現し事業拡大を図ってまいります。
また、債務者の返済状況に影響が及ぶことになれば回収の減少に繋がります。今後も債務者状況の把握、月次で期末業績の着地を予測し、未達が予測されれば即座に修正対策を講じてまいります。

また、証券業務では、Jトラストグローバル証券株式会社(JTG証券)において、預り資産1兆円を目指して「海外投資のJTG証券」「ベンチャー企業を応援するJTG証券」「ウェルスマネジメントのJTG証券」という3つのコア領域において付加価値創造に取り組んでまいります。証券業務における主要な課題、対策は以下のとおりです。

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項目 課題 対策
海外投資のJTG証券 個人向け債券ビジネスのトップハウス
  1. 豊富な米ドル建て投資商品やインドなど成長国への投資商品を中心に、多様な投資機会をお客様に提供
  2. さらに5バリュー社との業務提携等により、今まで以上に外国債券の商品ラインナップやサービスの強化に努め、個人向け債券ビジネスのトップハウスを目指す
ベンチャー企業を応援するJTG証券 アントレプレナーズ(起業家)へのサポート体制の充実 ・アントレプレナーズ(起業家)プライベートバンカ―として、起業家の要望に対して一気通貫で応対できる体制の充実
  1. ベンチャー企業の発掘、上場支援、上場後の資本政策等
  2. 上場したアントレプレナーズの資産保全並びに相続事業承継のサポート等
ウェルスマネジメントのJTG証券 富裕層顧客との長期的な信頼関係の構築 ・富裕層顧客との長期的な信頼関係の構築
  1. 担当営業員を変えることなく、資産管理や事業承継といったウェルスマネジメントのアドバイスを行う
  2. 子どもの教育支援や高度医療サービスの情報提供、非日常を体験できるイベントの開催など、外部のプロフェッショナルと提携した非金融サービスの提供にも注力
  3. 富裕層顧客のニーズをさらに満たす独自性のある新しい金融サービスの導入等により顧客獲得に注力

(韓国及びモンゴル金融事業)

当連結会計年度に引き続き、貯蓄銀行業務からの収益の確保に努めてまいります。韓国経済におきましては、基準金利が2024年11月に3.0%まで引き下げられましたが、貯蓄銀行の調達金利には金利引き下げの影響がすでに一定部分反映されていると考えられ、現状では基準金利が引き下げられても調達金利の引き下げ幅は制限されたものとなっています。また、韓国全体でコロナ禍以降、延滞債権や、個人回生・信用回復が増加の傾向にあることや、貯蓄銀行業監督規程が改正され、貯蓄銀行の健全性管理の強化を目的として多重債務者に対する貸倒引当金(損失評価引当金)の追加引当の段階的適用が予定されるなど厳しい状況が続いております。韓国及びモンゴル金融事業における主要な課題、対策は以下のとおりです。

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項目 課題 対策
不透明な韓国経済 収益確保に向けての対策
  1. 短期延滞債権の回収強化による貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の減少及び大型不良債権のリファイナンシング等による貸倒引当金(損失評価引当金)戻入の発生
  2. COF(調達金利)の低下
  3. 不良債権の戦略的な売却及び償却による利益創出の最大化

債権回収事業におきましては、コロナ禍以降、売却制限が継続しており、こちらも厳しい状況にありますが、これまでに培った高い回収力と遵法性を背景に事業拡大を図ってまいります。


(東南アジア金融事業)

当連結会計年度に引き続き、PT Bank JTrust Indonesia Tbk.(以下、「Jトラスト銀行インドネシア」という。)及びJ Trust Royal Bank Plc.(以下、「Jトラストロイヤル銀行」という。)による銀行業務からの利息収益を中心に収益拡大を見込んでおります。インドネシアでは、2024年9月に基準金利が3年7ヶ月ぶりに6.0%に引き下げられたものの、調達金利の高止まりが収益の押し下げ要因となっておりますが、市場実勢に合わせて貸出金利を引き上げたことにより一定の利益水準を維持したことや、銀行業における貸出金残高が順調に増加していることから利息収益も増加しております。なお、基準金利につきましては、インフレ率が低水準にあることから、2025年1月に5.75%に利下げが実施されましたが、今後、追加利下げも予測されることから、定期的に調達金利、貸出金利の調整を行ってまいります。
Jトラスト銀行インドネシアでは、収益確保のため、積極的な貸出残高の増強、NPL(不良債権)比率の低下による貸倒費用の削減、COF(調達金利)の低下を主要課題としております。

Jトラスト銀行インドネシアにおける主要な課題、対策は以下のとおりです。

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項目 課題 対策
貸付債権の積み上げ 収益基盤の強化 貸出増強に向けたミーティングをビジネス部門と日次実施、ビジネス/審査部門の連携強化により体制を見直し、不良債権リスク低減を図りつつ金利収入を最大限享受するため積極的にローン残高、社債残高の積み上げを図る
自己資本の拡充 規制改正に伴い、インドネシア金融庁(OJK)が自己資本比率11.0%(規制上の基準値)の達成を要請 2024年12月末の自己資本比率は13.83%となり現状クリア
規制等改正に柔軟に対応
マーケティング活動、流動性の確保
  1. 新規預金口座獲得、CASA(流動比率)の獲得
  2. ブランド認知度向上
  3. 住宅ローン提携
新規預金口座獲得を積極推進
・預金プログラムの実施
  1. 「Tora Green Saving」預金利息の0.5%をマングローブの植樹活動に寄付
  2. 「Tora Blue Ocean」預金利息の0.5%をプラスチック廃棄物の管理とリサイクルのために充当
  1. ブランドアンバサダー契約を締結したアイドルグループ「JKT48」とのコラボ預金商品の発売やイベントへの出展
  2. インドネシアプロサッカーチーム「Persija」とパートナーシップ契約を締結、公式ファンクラブ「Jakmania」会員に対する様々な特典の付与
  3. 日系大手デベロッパーの現地法人及びインドネシア大手デベロッパーと住宅ローン業務提携を展開
    (2024年12月末現在プロジェクト数:43カ所)

また、日本の地方銀行3行と、当該銀行の取引先事業者でインドネシアへ進出中、又は進出を予定している取引先をJトラスト銀行インドネシアへ紹介する業務提携契約を締結しております。新首都移転が計画されており、今後40年以上にわたり人口ボーナス期に入ることが予想されているインドネシアにおいて、それぞれの経営資源の相互活用をすることにより、インドネシアへ進出する事業者の企業価値を高めるとともに、インドネシアの経済発展にも寄与すると考えております。
インドネシアでは、近年、急速な人口増加と都市化によって不動産価格と需要が上昇するなか、不動産市場規模の拡大が続いており、不動産市場は最も好調なセクターのひとつとなっております。そのため好調な不動産市況を背景に債権売却市場も活性化しており、PT JTRUST INVESTMENTS INDONESIAでも債権回収事業は順調に推移しております。回収金額の最大化を図るための主要な課題、対策は以下のとおりです。

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項目 課題 対策
新規買取 債権の新規買取強化
  1. DD(デューデリジェンス)の正確性、スピード
  2. グループ内でのネットワーク強化、PT TURNAROUND ASSET INDONESIAとの連携他
回収 法的回収の強化等
  1. 回収困難債権に対する掘り起こし強化
  2. 競売会社との連携強化
  3. 人材育成、回収ノウハウの平準化他

カンボジアにおいては、Jトラストロイヤル銀行が、2025年のスローガンとして「Now,ACE Forward」を掲げ、敏捷性、一貫性、卓越性を活用して成功を達成するための積極的かつ進歩的なアプローチを行ってまいります。引き続き富裕層顧客を主な基盤とし、RM(顧客担当)と顧客との強固なリレーション力による貸出並びに運用提案により他行との差別化を図るとともに、ニーズを汲み取った商品開発やデジタル対応にも注力していく方針であります。2024年10月より新たに分割払い選択機能を付加したVISAクレジットカード利用率の向上、生命保険販売強化による手数料収入の増強等を具体的に進め、さらに、不良債権の回収、新規不良債権の抑制にも取り組み、収益拡大を目指してまいります。


(不動産事業)

不動産事業において、Jグランド株式会社(以下、「Jグランド」という。)では、不動産と金融のノウハウで築く投資用一棟マンション「J-ARC」シリーズ、IoTを標準搭載し付加価値付けした新築アパート「J-Maison」、中古アパートを取得し、外部によるホームインスペクションとリフォームを施した後販売する商品「Vintage Residence」を展開しており、今後も富裕層向けビジネスの拡大を図ってまいります。Jグランドにおいては、富裕層を対象とした投資用物件をメインの事業に据えることで、事業規模が順調に拡大することが見込まれており、今後の信用力の向上を目指して上場に向けた準備を進めていきたいと考えております。
また、株式会社グローベルスにおいても、土地・戸建・マンション・収益物件・クラウドファンディングに携わる総合不動産会社として着実に実績を積み重ねており、さらに、事業規模を拡大するためにも、当社グループの商品ブランドの認知に力を入れていく方針です。安定的な収益を確保するために、日銀の金利政策等を注視して、市況の潮流・変化を読み違えないように、マーケティング調査等をより一層慎重に行ってまいります。また、同社が当連結会計年度に株式会社東京証券取引所が開設しているTOKYO PRO Marketに上場を果たしたことにより、今後、上場会社としての信用力が増加することから、新規取引業者の開拓や優秀な人材の確保が期待できるほか、エンドユーザーからの安心感が購入決断にも繋がるものと考えております。


(投資事業)

投資事業においては、Group Lease PCL(以下、「GL」という。)からの債権回収に努めてまいります。2025年1月にもシンガポールの裁判所の確定判決に基づき3,729,608ユーロ(約607百万円 1ユーロ=163円で換算)を差し押さえにより回収しており、今後も裁判費用等の回収コストを抑制しつつ、回収強化を図ってまいります。なお、GLに対する債権につきましては、すでに全額引当を行っていることから、回収がなされる都度、収益計上されます。

当社グループは、株主の皆様への利益還元の充実と、資本効率の改善を通じた持続的な企業価値の向上を重要な経営課題と認識しており、自己株式の取得及び消却については業績や資本政策、株価など市場環境等を考慮して実施することとしています。近年は東南アジア金融事業への資本増強を含めた資本政策と株主還元とのバランスをとりながら決定してまいりましたが、現在は、拡大・成長モードに入っているとの認識のもと、当連結会計年度において、株主の皆様への更なる利益還元と、資本効率の向上により、適切な株主価値の実現を図ることを目的に自己株式の取得及び消却を行いました。また、配当につきましては、2025年1月1日から始まる本事業年度において、当社は第50期を迎えることから、これを記念して1株当たり1円の記念配当の実施を予定しており、普通配当と合算すると、2025年12月期の年間配当は、1株当たり17円(中間無配、期末17円(普通配当16円+記念配当1円))となる予定であります。今後も企業価値を高め、株主の皆様の期待に応えていきたいと考えております。